自転車は何故倒れない?

自転車は何故倒れない? どんな動きをしている? を考える。

 

 

1 自転車の傾き方向の運動

 

 

地面から自転車の重心までの距離 L (m) 一定

自転車の速さ v (m/sec) 一定

自転車の回転半径 r (m)

重力加速度 g (m/sec2) 一定

初速u (m/sec)で右に傾く

Fig.1.1

 

自転車の傾斜角をθ(鉛直方向と重心から接地点の方向とがなす角、時計周りを正、

単位rad)とする。自転車の傾きと自転車の回転半径は反比例し、1(deg)傾くと回転半径が

R(m)になると仮定して以下の近似を使う。

     (1.1)

ただし

 (rad m)   (1.2)

 

自転車の傾斜角θとθ方向の移動距離は以下の関係が成り立つ。

    (1.3)

 

微小回転方向の速度は

   (1.4)

となり、加速度は

    (1.5)

となる。

 

遠心力と重力による微小回転方向の加速度は

   (1.6)

θは微小より、として

  (1.7)

となるので運動方程式は

   (1.8)

となる。これは自転車が傾く方向に単振動することを示す。

傾きが大きいほど逆向きの力が働くため自転車は倒れない。

周期T

 (sec)   (1.9)

となる。

 

最大傾斜角θmaxはエネルギー保存より

   (1.10)

 (rad)    (1.11)

となる。これから自転車が速い(vが大きい)ほど傾かず、

傾斜方向の初速が速い(uが大きい)ほど傾くことが分かる。

自転車は速いほど安定する。

 

 

 

2 自転車の軌跡

自転車は一定の速さvで進行し、周期Tで左右の向きを変えるので、

その軌跡をFig.2.1のように表す。

Fig.2.1

 

対象性により

    (2.1)

となる。

y方向の位置とy方向の速度が同じ周期で位相がT/4ずれているので

y方向の速度は以下のように表せる。

     (2.2)

ただし

   (2.3)

Fig.2.2

 

自転車の回転角度をφ(y軸と回転半径方向とがなす角、時計周りを正、単位rad)

とし、自転車の軌跡をs(m)、自転車の回転半径をr(m)とすると

   (2.4)

となる。

微小時間変化が同じならば速さが一定なので

   (2.5)

である。

 

t=T/4におけるφT/4を求める。(2.4)より

   (2.6)

ここで

   (2.7)

(1.1)より(2.6)

   (2.8)

となる。(1.8)より傾きθは単振動なので

   (2.9)

とし、(2.8)

   (2.10)

となるので

  (2.11)

である。

 

よってt=T/4におけるy方向の速度vyminはφT/4を用いて

   (2.12)

となる。初期方向に進行する系では 0<φ<π/2 なので(2.2)(2.1)

(2.12)を用いて

   (2.13)

となる。

速さvが一定なので

   (2.14)

を用いてx方向の速度vx

   (2.15)

となる。また

   (2.16)

である。

 

(2.13)より時刻tにおける位置y

   (2.17)

であり、時刻T/4y=0なのでC=0となり(2.17)

   (2.18)

となる。

時刻tにおける位置x(2.15)より

  (2.19)

また時刻tx=0より

  (2.20)

となる。

 

 

 

3 具体的に計算してみる

Fig.1.1の値を

地面から自転車の重心までの距離 L =1.00(m)

自転車の速さ v =8.00(m/sec)

重力加速度 g =9.80(m/sec2)

初速u=0.100(m/sec)

また自転車は1deg傾くと回転半径が100mになるとして

(1.2)よりβを求める。

 

(1.9)より

周期T=1.21(sec)

(1.11)より

最大傾斜角θmax=0.0193(rad)=1.11(deg)

(2.11)(2.18)より

-26.3(mm) y 26.3(mm)

(2.15)(2.16)よりvx

  

なので

  

となる。

 

Fig.3.1

 

速さvだけ変化させて軌跡を描いてみる。

Fig.3.2

 

 

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